①在日朝鮮人の国籍と権利をめぐる25のQ&A

【2011年6月21日改】
macskaさんのブログで10月中旬より白熱した有意義な議論が展開されました。
http://d.hatena.ne.jp/macska/20090508/p1#c1254076937
中でもgiroroさんの回答はコメント欄で他のコメントにうずもれさせておくのはもったいないくらいのものですので、文意を変えない程度において一部文章を整理変更し、Q&A式で、転載させていただきます。giroroさんとともに、Qとして一部引用したコメント欄の参加者にも感謝いたします。



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(前提)
日本は敗戦し1952年までGHQの占領下で国家としての独立を失っていた。一方、朝鮮半島では1948年に相次いで大韓民国朝鮮民主主義人民共和国が樹立、50年には朝鮮戦争が始まった。その前年の1949年10月7日、駐日大韓民国代表部はマッカーサー連合国司令官に「 在日韓国人の法的地位に関する見解 」を伝え、在日大韓民国国民の国籍は母国の韓国であり、日本国籍は完全に離脱したと宣言したのだ。日本国籍を離脱、つまり捨てさせたのは、日本側ではなく韓国政府であり、それに対抗する北朝鮮政府だったのだ。




【Q1】
韓国政府は、朝鮮籍の人全員を「韓国籍」として外国人登録しろと要求しましたが、日本はそれを拒否しています。どうしてですか?

●A1.
拒否して当然です。
日本の主権でできる範囲は「日本人であるか否か」を決める事までですから。日本人でない者がどこに属するかを勝手には決められませんから。日本は日本国籍を認められなくなった時点で、単に旧大韓帝国に帰属する者として扱ってるだけです。そこから先は本人なり朝鮮半島の正当な政府にしか決められないからです。
だから、韓国政府が韓国籍の者と確認し、必要な証明書(パスポート等)をもたせろという話になる。じゃないと、日本が韓国の主権を侵害して「韓国に帰属する」と認証したことになっちゃいますから。日本国籍を認めるか認めないかの決定を下すのは日本政府ですが、その前に日本国籍を認めるには「国際法に基づく根拠」が必要なのですよ。
国際法に基づく根拠」とは

・従来より自国の国民として明示・黙示の同意が示されている
・領土の分割併合
・長期間の平穏な統治(戦争による占領の後であってもOK)
・関連国の間での国籍に関する国際条約

といったたぐいのものです。これらを諸外国が認めた時点ではじめて国籍を認めることができます。残念ながら、サンフランシスコ条約が成立したおかげで、朝鮮に対するこれまでの日本統治はすべてなんらかの法的根拠として使う事は認められない(=権原の放棄)とされてしまいました。
なので、在日朝鮮人が日本人とする際に一般に言われる根拠である

・平和条約発効まで日本人だった事
・朝鮮が日本に統治されていた事
・内地で日本人として暮らせた事

などは、日本が朝鮮統治していた事に他ならないので、どれも日本国籍を認める理由にできないんです。



【Q2】
韓国政府が日本国籍を与える必要がないと言ったのだから、 国籍剥奪の責任は日本政府ではなく韓国政府にあるといって聞かない人がいるのはどうしてですか?

●A2.
だから、その人たちの言い分の方に理があるのですよ。
朝鮮半島唯一の合法政府たる韓国が在日の旧大韓帝国籍の人たちを自国に帰属しないと宣言した場合、日本が初めて一方的に日本国籍を宣言できる可能性が出てくるからです。旧大韓帝国を継承したのは韓国であり、彼らが「こいつらは朝鮮人じゃねぇ」と言わない限りは旧大韓帝国あるいはその継承国に帰属するからです。
日本国籍保持者として現実に日本国内で長い年月生活してきたことが日本国籍を認める正当性にできないことを条件にして、日本は主権を回復したんです。これを譲ることは条約に違反したとして連合国(国連ですね)に再占領される事になりかねません。
また、無国籍になる(?)理由は、当事者が大韓民国の定める手続きに従って手続きを行わないからに他なりません。日本には一方的に日本人あるいは韓国人と決定できる正当な理由がありませんから、本人あるいは韓国の責任で国籍を確定しなくてはなりません。
終戦後にやってきたGHQの総司令官は、在日朝鮮人を解放国民として扱えとの指令を受けています。ですので、日本政府が勝手に日本人扱いをすると、それこそ占領軍にはむかうことになるのですよ。



【Q3】
サンフランシスコ和平条約に署名することが国籍剥奪を要請するのであれば、日本政府は署名を拒否するべきだったのでは?

●A3.
連合国によって在日を含む朝鮮民族が日本に隷属を強いられているとされ、そのような日本の統治から解放されるべし、という決定が一方的になされてるんです。だって日本は「無条件降伏」したんですよ?
勘違いされているようですが、無条件降伏した日本はサンフランシスコ条約に定められた規定を一方的に受け入れるしかないんです。連合国に日本に不利な扱いをしないようお願いすることは出来ても、たとえ不本意な内容であっても一度連合国が決めてしまった事には逆らえません。それが「無条件降伏」です。日本が在日に国籍を認めるために必要な法的根拠をすべて無効とする、という規定も連合国が決めた事です。なので「在日は犠牲になっていいのか!」とお考えなら、そう決めた連合国に言っていただく必要がありますね。
日本に拒否権があるなんておっしゃってるあたり、戦後処理を平時の対等な国家間の外交問題と勘違いされているんじゃないですか?

いずれにせよ、サンフランシスコ平和条約で日本への併合自体が無効となり、また日本の統治が及ばないという事になった上に、もはや存在しない大韓帝国のもっていた統治権は、朝鮮半島の正統な政府である大韓民国が継承したことになっています。そしてその大韓民国在日朝鮮人を自国民であるとしています。
だから日本の統治から解放され、併合前の旧大韓帝国という現存しない国に帰属する状態(これが朝鮮籍です)に戻った在日は、大韓帝国統治権を継承した大韓民国の国民として認められるべき存在なんです。必要な庇護を受けられるよう大韓民国の定める手続きに従い大韓民国の国民となって生きるか、あるいはそれを受け入れず本人の意思に基づいて日本への帰化をするか、いずれかを選択する他ありません。

そのどこに日本が関与出来るというのでしょうか?日本が併合は継続している、とでも主張するのですか?それとも朝鮮の支配を継続しているとでもいうのですか?日本国内に取り込んでしまった朝鮮人には日本が権利を留保する、とでもいうのですか?
いずれもすべての権原を放棄するという連合国の決定に反してるので許されないんです。それを実力でやってしまうと、それこそ拉致とか侵略と言われるものと同じです。



【Q4】
原則論としては本人の意志を確認すべきであり、ただしどうしても確認ができないという場合においてのみ、「それまで長年生きられてきた現実を変更しない」、すなわちこれまで日本国籍を持っていた人は、本人の意志が確認できるまで、一時的に現状維持するべきだったのでは?

●A4.
限定的でも旧大韓帝国に帰属する朝鮮人を日本人扱いすることを認めると、朝鮮のすべての権原、権利、請求権を放棄するという条約の規定に反するのです。繰り返しておきますが、日本は「無条件降伏」したのですから抗弁出来ません。
マッカーサーも「天皇及び日本政府の国家統治の権限は、連合国最高司令官としての貴官に従属する。貴官は、貴官の使命を実行するため貴官が適当と認めるところに従って貴官の権限を行使する。われわれと日本との関係は、契約的基礎の上に立つているのではなく、無条件降伏を基礎とするものである。貴官の権限は最高であるから、貴官は、その範囲に関しては日本側からのいかなる異論をも受け付けない。」という命令を受けています。これからも日本が抗弁しても受け入れられないことは明白ですね。

また「無条件降伏」を受け入れない=日本殲滅、というのがポツダム宣言ですから。ポツダム宣言に「吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ」と書いてある通りです。ということで、おっしゃっているペナルティとは「日本国本土ノ完全ナル破壊」に他なりません。こんなペナルティ受けてしまっては日本自体が消滅しますね。

ということで、この扱いに倫理的な問題があるなら、朝鮮独立に関する扱いを規定した連合国に対して抗議すべきであって、日本が倫理を問われる筋合いはありません。裁判で有罪判決を受けて服役している人に「裁判は不正で非倫理的だから刑務所から直ちに退去するべきだ」と言うのと同じで、抗議の矛先が全然違う方に向いてますよ。



【Q5】
最低限、日本は届け出だけで帰化できる制度を提供すべきだったのでは?

●A5.
在日朝鮮人の権利を保護するのは一義的に旧大韓帝国を継承した正統政府の仕事です。日本はすべての権原を放棄したのだから、国際法を遵守し国際協調を誠実に履行する日本の立場としては、あくまでも権原放棄により朝鮮人を日本の統治から外し、朝鮮の正統政府の樹立とその政府の判断を待つべし、です。その正統政府は在日は自国民であると判断しているのですから、これ以上日本が何かを言うことは出来ません。朝鮮民族の国である韓国が自国民として庇護すると宣言しているのですから。それに抗弁する理由がありません。それとも韓国の在外韓国国民に対する庇護がなっていないとでも言ってケチを付けろとでも?立派な内政干渉であり、人権擁護の皮をかぶった他民族の自治への介入という帝国主義的発想です。

そういう観点からも、本人の申告だけで自動的に帰化を認めるようなやり方は、韓国の対人主権を実質的に無意味にする上に、他の日本で生まれ日本で暮らす在日外国人との間に差別を生み出すことになります。日本はやはり外国人として一定の基準で審査する必要があります。そもそも韓国の主権が及ぶはずの人たち(主権侵害になるので韓国が確認するまで日本が言えるのは旧大韓帝国国籍まで)であり、韓国は帰化手続きなしで在日を自国民と確認していますので、在日朝鮮人は自らの民族の作る国である韓国とすることで国籍を確定出来ます。この措置は植民地の独立の際に掲げられた民族自決という考えに沿った妥当なものですね。

朝鮮人が日本人であるといえる法的根拠は韓国併合という放棄したはずの権原を根拠にしている事実は曲げられません。内地で日本人として暮らせたのも、韓国併合によって日本国籍を獲得し、そうやって獲得した日本国籍を持つ者の子を朝鮮総督府が朝鮮戸籍令という朝鮮で施行された命令によって日本人とすると定めていたからなんですよ。それらが失われた以上、日本の統治が及ぶ前の旧大韓帝国国籍に戻らざるを得ず、その上で正統後継者たる韓国が自国民の権利保護に全力を尽くすべき問題ですから。

日本自身が日本の存立の拠り所とする国際法の遵守を捨てることは出来ませんから。日本の天皇や政府に優越するGHQ総司令官への指令書にも「解放国民として扱う」と規定されている以上、無条件降伏に基づく日本に強制された決定事項ですので。

一度たりとも国籍を喪失してしまえばその人たちはもう外国人です。内地人とて、たとえ日本国内に引き続き在住していても日本あるいは外国の法律によって国籍を喪失してしまえば、帰化によるしか回復の方法はありません。国籍法にそう書いてありますが?で、過去に国籍を持っていた経緯というのを考慮して帰化の条件を緩和しているのも在日と同じ扱いです。そういう意味では過去に日本人だったという事実を十分勘案した公正な法的扱いがされていると思いますね。先に書いたように、他の外国人との整合性の問題があると思いますが、法は法です。

連合国(国連の事ですね)、大韓民国他は、朝鮮民族を日本が統治する事を日本による朝鮮民族の隷属化と非難してたわけです(カイロ宣言にそう書いてありますね)。日本の支配から民族を解放することが求められているのに、日本国内に居る日本国籍扱いの朝鮮民族を解放せずに済ませられる方が変ですね。

内地の朝鮮人を日本人扱いするってのは、例えてみれば、植民地の住民を奴隷扱いしていた国が植民地の解放と独立を認めたのに、自分の国の中に住んでいる植民地の住民についてはこれまで通り奴隷扱いを継続する事とした、ということと同じなんですよ。連合国は実際に朝鮮人がどう扱われたかなんて問うていません。彼らは朝鮮民族が日本人扱いされている事を隷属状態と看做していて、そういう判断を受け入れるという無条件降伏の文書に調印させられたのが日本です。

そういう価値観に基づき、実際にGHQは内地での「解放国民」扱いという指令を受けているのですから、朝鮮人が日本から離脱せずにすむ措置という選択肢はありません。それじゃ本人の希望という口実で隷属状態を認めちゃうことになるからです。だから、国籍選択でなく国籍喪失後の帰化でなくてはならないわけです。一旦国籍を離脱して日本への隷属から解放されたという状態を確定させ、その上で本人が自発的に日本人となる事を求める、というやり方は、連合国や大韓民国の見解を受け入れた日本に取っては、彼らの見解との整合性を取るためにも極めて重要なことなんです。



【Q6】
誰に日本国籍を与えるかというのは、日本政府が自らの主権で決めることですから、日本政府さえその気になれば、なんの正当性も根拠も必要としないのでは?
が、どうしても具体的な理由を述べよと言うのであれば、特別永住者の存在が二世三世四世と続いてきているという、おそらく当時の日本政府が想定していなかった長期化が理由になると思います。当時はおそらく、特別永住者とされた人たちは、いずれ日本国籍を取得するなり、朝鮮半島に帰還するなりして、何世代も後まで延々と残るとは想定していなかったのではないかと思いますから。

●A6.
国籍の国内専管事項というのは、あくまで条約に反しない限りにおいてという条件付きだと言ったかと思いますが?

想定していなかったという根拠はありますか?逆に大韓民国の要請もあり、日本国内で在日外国人として永住することを想定し続けていた事は、1960年代の日韓法的地位協定やその後の1980年代の日韓政府間の交渉の結果による特別永住者という許可制度でも明らかでしょうね。もし日本国籍を、という話であれば、これらの過程で取り上げられていたはずですが。



【Q7】
現状では大韓民国の主権が及ぶとされ、その韓国の要請に基づく形で韓国の対人主権を維持したままの定住の便宜を図ってきたわけですが、しかしその「現状」は日本政府のアクション次第で変えられるのではないでしょうか。
いきなり日本が国籍選択権付与を断行したら日韓の過去の取り決めを踏みにじるという反発も予想されますが、外交問題である前に人権問題であるという点に重点を置いて根回しておけば、韓国が特段に問題視するとは思えません。
若干の危惧があるとすれば、民団ですね。韓国政府は在日個々の声には鈍感でも、民団の要求には聞く耳を持つと思いますから。たとえば「地方参政権」だったら後押ししてくれる。
わざわざこんなことを書くのは、届け出だけで日本国籍を取得できる法案が自公政権時代にできていたにもかかわらず、多くの反対で国会提出に至らなかった理由の一つとして、こんな話を聞くからです。つまり、民団や総連が反対したために、いろいろとしがらみのある当時の議員たちが与党・野党を問わず二の足を踏んだ、という「噂」です。この「噂」は私が在日の知人から聞いたものなので、本当かどうかは分かりませんが、ありえない話ではないと思います。

●A7.
> 人権問題であるという点に重点を置いて根回しておけば、韓国が特段に問題視するとは思えません。

そこが問題で、韓国政府の人権面での庇護の不備を指摘するのは、対人主権の侵害と主張されかねない危険性があるんです。だから、一番無難なのは在日が日本国籍と韓国国籍の選択制を求める事だと思うわけです。

ドイツとオーストリアの間の国籍選択についても、しばしばオーストリア人にドイツ国籍を選ぶ自由を与えるためという形で引用されがちですが、実際は全く逆の状況を反映してるんですね。
というのも、そもそものきっかけが西ドイツの裁判所によって、在独オーストリア人にドイツ国籍を確認されたことに対する在独オーストリア人の反発、ドイツによるオーストリアの外交的保護権の侵害って問題なんですね。日本で言えば、在日に日本国籍があると確認したところ、在日から激しい反発を招き、韓国との外交的保護権の問題に発展したってことですかね。であれば、民団や総連の反発は在独オーストリア人の反発に近いものといえるかもしれませんね。

そういう問題を避けるためにも、ぜひ在日には韓国政府への働きかけをしてもらいたいものですね。韓国政府首脳によって日本への帰化を奨励するかのような発言が繰り返されていることもありますから、当事者の在日が韓国政府に請願することで事態が好転する可能性は十分あり得ると思いますよ。



【Q8】
現代の問題として、日本生まれの永住者の子どもに対しては、特別永住/一般永住を問わず、届出による日本国籍取得制度を設置すべきです。それは、「旧植民地出身者の届出による日本国籍取得」とは別問題です。両者は矛盾しないのでは?

●A8.
現代の問題として出生地主義であるべしという理屈が説明されていないので、なぜそういう制度を作るべきなのかも理解出来ません。
日本には国際協調主義という国是がある以上、諸外国の主権を最大限に尊重するべきですね。日本在住の外国人に対する帰属国の対人主権を骨抜きにしかねませんから、帰属を安易に変えられるような制度を相手国の了承なしに作る方が良いという理屈は成り立ち難いでしょうね。



【Q9】
現代の問題として出生地主義であるべしという理屈は、日本で生まれ育った人間の日本における人権尊重の見地からです。
「人権とは、人が人として当然に持っている権利」のはずですから、本来、人権が国籍によって左右されるべきものではないのですが、実際問題として、居住地の国籍がないと人権が保障されないという悲しい現実があるからです。 在日外国人永住者の子どもで日本で出生した者は、日本人の子どもと同じように、日本で一生を過ごす可能性が高いからです。
日本国籍の付与は日本政府の権限で出来ることです。国籍の得喪については、各国の国内管轄事項というのが国際法の原則ですから。「届出による日本国籍の付与」が「帰属を安易に変えられるような制度」とのことですが、日本に在住するに至った経緯と条件、本人の意思表示が必要であることから、何らの問題もありません。

●A9.
その人権尊重に関する第一義の責任は大韓民国にあります。
実際大韓民国は自国民として庇護すると言っているのですから、それを尊重し、その大韓民国の庇護の方策に可能な範囲で協力するのが国際協調を国是とする日本の取るべき態度です。「定住しているから国籍を与えるべき」という論法は、逆に言えば「他の国に定住しているんだから、その国で面倒見てもらえば良く、うちの国で面倒見る必要はない」という国民の遺棄の理屈に少なからぬ正当性を与えてしまいますよ?

日本国籍の付与は日本政府の権限ではできません。あくまで他国から明示・黙示の了承が前提です。国籍とはどの国の主権が及ぶのかを示しているのです。日本の権限でできる、というのは、韓国の同意なしに韓国の領土を一方的に日本が領土と宣言し占領するのと同じですよ?

日本に在住するに至った経緯と条件、本人の意思表示が必要であることを条件と課して国籍を取得する手段は既に用意されていますよ?「簡易帰化」という手段です。
しかし、審査は必要です。なにしろ、朝鮮籍を持つ者に対しては

・日本は対人主権を主張するための根拠が平和条約発効で失効
・代わって大韓民国が対人主権を宣言している
大韓民国の宣言に対して他国は明示・黙示の同意を表明済み

という風に、勝手に日本が帰属を決める事が出来ない状態になっているからです。とすると、他の帰属の決まっている定住外国人と同じく審査をした上で許可する事にしなければ、他の定住外国人との間で法の下の平等が成立しなくなります。

>日本で日本国民として生きてきた(けれど本人の責任とは関係のない事情により国籍が消滅した)人と、日本で外国人として生きてきた人とのあいだで、扱いに違いがあってはおかしいですか?

はい、おかしいです。簡易帰化の規定すらおかしいと思います。特に条約発効後に生まれた在日は他の日本生まれの在日外国人となんら立場に違いがありません。いずれも本人の責によらない日本生まれの外国人ですから。



Q10
在日の人権尊重に関する第一義の責任は大韓民国にあるというのはまったくナンセンスな話ですね。
私は「日本における人権尊重」を論じてるのですよ。在日外国人の人権について、日本を統治するのは日本政府ですから日本国内に在住する外国人の処遇の責任が日本政府にあるのは自明のことです。「日本で生まれ育った人間の“日本における”人権尊重」は、日本の統治に大きく委ねられているのです。以下のURLは、日本のある憲法学者の「外国人の人権」対する見解が述べられています。あなたの外国人の人権に対するよりよき理解の一助にしていただければ幸いです。
http://www.geocities.co.jp/MusicHall/8093/kawaraban/article17.html
そもそも、ここで私が主張したのは、韓国・朝鮮籍永住外国人だけでなく、全ての定住外国人子弟に対する日本国籍取得制度に関することです。 在日外国人定住者への日本国籍付与は日本政府管轄なのであって、日本の国内法の問題に大韓民国の出る幕はありません。 

日本国籍の付与は日本政府の権限ではできませんとありますが、現に、毎年、朝鮮籍(=朝鮮民主主義人民共和国を表す国籍ではない)・韓国籍、その他諸々の外国籍の者に、日本のいわゆる「帰化制度」のもと、日本政府の権限で日本国籍を付与しているではありませんか。(笑) あのね、日本政府の権限で出来ないことは外国籍の得喪であって、日本国籍の付与は日本の主権にかかわる問題であり、まさに日本政府の権限において行うことなのです。

韓国の同意なしに韓国の領土を一方的に日本が領土と宣言し占領する例は、意思のない土地と意思を持った人間とを一緒くたにした、非常にトンチンカンな議論をしますね。(韓国籍を選択しない)朝鮮籍の者が韓国に同意をもらって日本国籍を取得するなどという不可思議な話を、私は一度も聞いたことがありません。 
さらに、韓国籍者にしてみても、「国籍自由の原則」が在外韓国人永住者には(兵役義務の拘束なく)認められているので、日本国籍の取得に韓国の同意など必要ありません。 韓国人が外国籍を取得すれば、韓国は二重国籍を認めていないので、韓国国籍法に基づいて韓国籍を喪失するのです。 
つまり、韓国籍の離脱に韓国の同意が必要なのではなく、韓国人の意思に韓国政府が従うわけです。ちなみに、日本人は日本国憲法第二十二条によって日本国籍離脱の自由が認められています。(余談ですが、朝鮮民主主義人民共和国も、全朝鮮半島出身者に対人主権を宣言していることを、あなたはご存じないようですね。その意味では、在日は潜在的重国籍者といえます。)

>他の帰属の決まっている定住外国人と同じく審査をした上で許可する事にしなければ、他の定住外国人との間で法の下の平等が成立しなくなります。

由来や生い立ちの異なる外国籍者に対して異なった日本国籍取得要件(いわゆる「帰化要件」)を適用することは、法の下の平等に反しません。 そのような制度の立法化は、日本国の主権において出来ることです。繰り返しますが、国籍の得喪に関する立法は、各国の国内管轄事項というのが国際法の原則です。

●A10.
日本が外国人の人権を保護するのは帰属国からの庇護の要請があるからです。要請がなければ日本人は外国人の人権を保護する理由も根拠もないことになります。無国籍者の扱いが国際法上の深刻な問題である事は論をまたないわけですが、その原因は誰も当該者の人権についての責任を持っていないことにつきます。

日本の「帰化制度」のもと、日本政府の権限で日本国籍を付与しているのは、あくまで「本人の意思」に基づいて「審査」を行い「許可」している点で、届出による国籍選択とは全く異なります。個人の意志に基づく申請を許可する形での国籍変更は世界中の多くの国で認められている事ですし、そもそも帰属国である大韓民国からの異議が唱えられた事はありませんね。このように明示・黙示の同意が成立している限りは問題ないのですが、朝鮮籍の人たちには大韓民国が自国の対人主権を宣言済みですので、大韓民国の明示・黙示の了解なしに日本人扱いすることは出来ません。
というか、そもそも在日朝鮮人に日本が主権を維持し続けることはできないのですよ。
国籍選択は日本の主権が途切れる事なく継続する事を前提にしているので、サンフランシスコ平和条約に明確に違反します(朝鮮人日本国籍は、日本が朝鮮半島を統治していたからというのが根拠なので)。帰化は国籍を喪失した(統治が終わったので日本国籍と出来ない事を認めた)上での本人意思に基づく個別の扱いですから。

> 意思のない土地と意思を持った人間とを一緒くたにした、非常にトンチンカンな議論

国家の主権の及ぶ範囲を本人の意思だけで自由に変更出来るわけではないからですよ。国籍離脱の自由を規定する条文が憲法に存在するのは、あくまで主権国家が本人の意思による離脱を承認しているに過ぎないからです。
あと、朝鮮民主主義人民共和国は、日韓基本条約上の規定により朝鮮半島の合法政府とは認めておりません。国交も結んでおりませんが?

> 国籍の得喪に関する立法は、各国の国内管轄事項というのが国際法の原則です。

大事な事を忘れてますよ?Wikipediaに書かれている一文ですが「もっとも無制限に妥当するものではなく、国籍の決定に関する条約を締結した国家は、国内立法に際して条約による制約を受けるのはもちろんである。」なので、日本の場合は平和条約による権原喪失と独立承認に縛られることになりますね。この朝鮮のすべての権原を喪失したという規定に基づき、在日朝鮮人というだけで一律に国籍を認める事はできません。というか、朝鮮人日本国籍は一度喪失するしかありません。

ですので、申請と審査によって許可を与える帰化の形を取るのは当然ですね。要件については過去の経緯を考えて、というのはあり得るでしょうね。実際帰属国の大韓民国からそういう要請があったわけですから。ここでも大韓民国による自国民の庇護、という事が、日本での朝鮮籍韓国籍の人たちの権利保護にいかに大事な意味を持つかの片鱗が見えると思いますけどね。



【Q11】
>日本が外国人の人権を保護するのは帰属国からの庇護の要請があるからです。要請がなければ日本人は外国人の人権を保護する理由も根拠もないことになります。

あまりに無知な発言に正直ビックリしています。 帰属国からの庇護の要請がないからといって日本政府が外国人の人権を保護しないというようなことは、国際法上も日本国憲法上も許されないことです。 百万歩譲って仮にそれを認めたにしても、それこそあなたの言い分は「外国人の人権が日本においてどのように扱われるかは日本の統治に委ねられる」ということの一つの証明になるだけのことです。 要するに、国籍国の庇護の要請があろうとなかろうと、外国人の「日本における人権尊重」は、まさに日本国が採る外国人施策に左右されるということです。 日本国の施策の責任が日本国にあることは自明です。

>あくまで「本人の意思」に基づいて「審査」を行い「許可」している点で、届出による国籍選択とは全く異なります。個人の意志に基づく申請を許可する形での国籍変更は世界中の多くの国で認められている事ですし、そもそも帰属国である大韓民国からの異議が唱えられた事はありませんね。このように明示・黙示の同意が成立している限りは問題ないのですが、朝鮮籍の人たちには大韓民国が自国の対人主権を宣言済みですので、大韓民国の明示・黙示の了解なしに日本人扱いすることは出来ません。

こんな意味不明の屁理屈を捏ねるあなたに、どう言えば説明がつくのでしょうね? 
永住外国人国籍選択権制度を施行することが即日本国籍を付与することではありませんよ。国籍選択権が施行されても、本人の意思表示がなければ日本国籍は付与されません。日本政府が一方的に日本国籍を押し付けることはできないのであって、当該外国籍者が日本国籍を選択しなければ外国籍のままです。 従って、日本国籍の取得が「本人の意志」表示を前提としているという点では、現在の帰化制度も国籍選択制度も変わりがありません。
しかも、前回述べたとおり大韓民国は海外定住韓国人に国籍離脱の自由を認めているので、日本国籍の付与に何ら障害が無いことは両制度とも同じです。帰化制度による「日本人扱い」が可能なら、国籍選択制度による「日本人扱い」も可能です。一方がよくて他方がダメと他国に日本の法律が干渉される筋合いなどどこにもないのです。

再度繰り返しますが、国籍の得喪に関する立法は、各国の国内管轄事項というのが国際法の原則です。 日本の国籍法を改正して特定の要件を満たす在日外国人に日本国籍選択権を付与する制度を作ることは、日本国の自由です。 日本は主権国家ですから日本国が日本国民たる要件を決めるのに、他国に了解を求める必要などあるはずがないのです。 それともあなたは、日本が主権国家であることを否定したいのですか?

>というか、そもそも在日朝鮮人に日本が主権を維持し続けることはできないのですよ?国籍選択は日本の主権が途切れる事なく継続する事を前提にしているので、サンフランシスコ平和条約に明確に違反します(朝鮮人日本国籍は、日本が朝鮮半島を統治していたからというのが根拠なので)。帰化は国籍を喪失した(統治が終わったので日本国籍と出来ない事を認めた)上での本人意思に基づく個別の扱いですから。

何をたわけた事を言ってるのですか? 戦後の日本政府による国籍剥奪によって、在日朝鮮人日本国籍はすでに途切れているではありませんか。届出による日本国籍取得制度とは、そのような日本国籍を喪失した在日朝鮮人永住者に対して、新たな制度の立法化・国籍法の改正によって「本人の自由意思に基づく」日本国籍取得の道を開こうとするものですよ。
さらに、そもそものここでの私の主張は、「現代の問題として、日本生まれの永住者の子どもに対しては、特別永住/一般永住を問わず、届出による日本国籍取得制度を設置すべき」というものですから、両制度ともが現代の立法の問題なのであり、従って戦後のサンフランシスコ平和条約と何ら関係がありません。

>>意思のない土地と意思を持った人間とを一緒くたにした、非常にトンチンカンな議論
>国家の主権の及ぶ範囲を本人の意思だけで自由に変更出来るわけではないからですよ。

民主主義国家においては本人の意思と国家の意思の合意によって個人が国籍を取得できるのであって、あなたが国籍に関する日本の主権を蔑ろにするのみならず、在日朝鮮人個人の国籍選択の自由をも無視して韓国政府の言い分のみに固執するから、トンチンカンな議論だと言ったのです。

●A11.
> 帰属国からの庇護の要請がないからといって日本政府が外国人の人権を保護しないというようなことは、国際法上も日本国憲法上も許されないことです。

国際法上とおっしゃいましたね?国際法上の「外交的保護権」という概念があるのは、まさに日本政府には最終的な外国人人権の庇護の責任も権利もないことの現れなんですが。他の国に属する人に対して勝手に庇護を与えることは「庇護」の内容が帰属国の主義主張と異なる場合、内政干渉や主権侵害になりかねないからです。外国に行くときに持つパスポートは、帰属国が所持者の帰属を証明すると同時に、他の主権国家や政治的実権に対して自国民への庇護を要請する公文書なんですよ。ということで、

>「外国人の人権が日本においてどのように扱われるかは日本の統治に委ねられる」ということの一つの証明になる

等ということにならないのは明らかですね。日本が手出しした結果について帰属国が異議を申し立て実力で保護する権利が留保されてるわけですから。国によっては軍隊投入して実力で外国に不当に扱われた自国民を保護・奪還だってするってわけですからね。

> 永住外国人国籍選択権制度を施行することが即日本国籍を付与することではありませんよ。 

ではお伺いしますが、選択肢に日本国籍が含まれる理由はどこにありますか?朝鮮統治を権原とする朝鮮人日本国籍は、すべての朝鮮の権原の放棄を定めた平和条約によって禁じられています。1910年の韓国併合の際の朝鮮人の国籍移動には明文規定はありません。日本が統治権を譲られた旧大韓帝国の臣民だからという理由で、日本国籍を取得したのです。ですから、朝鮮統治を放棄すると、朝鮮人日本国籍を主張する理由が無くなります。平和条約が発効してしまった後であり得る選択肢は朝鮮半島にある国なんですね。

っていうか、だいたい選択制度を日本が施行する根拠もありません。朝鮮統治が終わってしまったので、朝鮮統治を根拠に日本人だとしていた朝鮮人は日本の手を離れてしまいますから。日本にいるのは外国人となった朝鮮人で、朝鮮人には大韓民国が自国民であると主権を宣言済みです。他国の対人主権が既に及んでいる在日朝鮮人に対してどういう権原に基づいて選択制度を施行するのですか?だから帰化という本人の自発的意思に基づく申請と許可という形で、本人には直接関係のない国籍を取得するという形を取っているのです。

> 再度繰り返しますが、国籍の得喪に関する立法は、各国の国内管轄事項というのが国際法の原則

再度補足しておきますが「国際法に反しない限りにおいて」ですよね?で、朝鮮人の扱いには日本国との平和条約の朝鮮独立・権原放棄規定が国際法として厳然とした効力を持っている、というのを忘れてはいけません。

> 届出による日本国籍取得制度とは、そのような日本国籍を喪失した在日朝鮮人永住者に対して、新たな制度の立法化・国籍法の改正によって「本人の自由意思に基づく」日本国籍取得の道を開こうとするもの

どうも誤解されているようですが、朝鮮籍というのは「本来大韓民国国民として確認されるべき者のうち、大韓民国による国民の証明書を持参して外国人登録法上の記載事項の変更をしていない者」という位置づけです。ですので、平たく言えば「韓国人なのに、日本に定住する韓国人としての必要な手続きをサボっている者」です。

しかし届出は外形的要件を満たしていれば審査なしに自動的に効力を発揮してしまいます。つまり、潜在的に日本が対人主権を宣言できるという権原に基づかないと、韓国の主張する対人主権と真っ向からぶつかってしまいますよ?これは永住外国人として定住出来るよう特別な配慮をさだめた大韓民国との間との申し合わせ等にも反しますね?国際協調という観点から言えば、大韓民国国民としての地位を勝手に脅かす制度を新設する理由はありません。

> 民主主義国家においては本人の意思と国家の意思の合意によって個人が国籍を取得できる

日本国政府は国民の国籍離脱の権利を制限していますよ?日本国籍である事に合意しないからと言って、たとえば無国籍者となることは出来ません。

> 在日朝鮮人個人の国籍選択の自由をも無視して韓国政府の言い分のみに固執する

国籍選択の自由に関しては、帰属国である韓国の判断に基づくのは当たり前の話です。



(人権について)
国際法上、人というのは主権国家に属する事で初めて人として扱われるんですよ。人に対する不当な扱いはその人の帰属する国の主権に対する侵害行為である、という考え方で人権が守られてるんです。じゃないと強大な実力を持つ国と個人が直接実力で対決することになるからです。ですので、ある国に帰属する人にとって、帰属する国の見解というのは絶対的意味を持つんですよ。

国際条約があるじゃないか!といっても、国際条約自体が条約を結んだ国相互の実力を背景にした相互承認で成立してるのですよ。結局の所国際法に実効性があるのも、その人に帰属国の主権が及んでいるからなんですよね。

> 韓国政府は在日コリアン全員を即座に韓国籍として登録し、日本国籍取得を希望する人を通常の帰化希望者と同様に扱うよう要求しているけれど、日本政府はそのどちらにも従っていない。

韓国政府のこの主張に国際法上の問題がある事を理解出来ますか?韓国籍を確認するのは韓国政府の主権によらないと不可能です。だから韓国政府が確認した事実によらない限り、日本が韓国籍として登録出来ません。だから日本は「大韓民国に国民として確認されるべき者」という朝鮮籍という便宜上の呼称を用意したんです。

実は韓国政府の要請を受け、本人申告のみで朝鮮籍から韓国籍に書き換えしはじめたけど(昭和25年法務総裁談話)、上記のとおりの理由で問題となり、結局昭和26年の出入国管理庁長官通達で中止となったんですよ。この間の書き換えは韓国政府による国籍証明が伴わないことから、単に外国人登録の国籍欄に韓国・大韓民国と書いてあるだけでは韓国の国籍の証明にならない、という話になっています(1989年大阪地方裁判所など)。ちなみに他国籍の場合、国籍欄への国籍記入には国籍証明添付が条件なので、戸籍実務上は国籍証明書として外国人登録済証明書が有効とされているそうです。




【Q12】
申請によって日本国籍の「回復」ができるようにと私は考えていましたが、やっぱり「帰化」という形をとらないと法的な面をクリアするのが難しいようですね。

●A12.
そうなのです。日本は朝鮮の独立とすべての権原の放棄をしましたので、朝鮮人を日本人とし、そのまま内地に住まわせてよいと決める法的根拠をすべて失ってしまったんです。そのようにして日本の対人主権から外れた人たちに対して、大韓民国が対人主権を宣言しましたし、それに世界の国々は明示・黙示の同意を与えました。だから現に日本に住んでるじゃないか、といわれても、それに対して日本政府が正当性を与えるには「外国人としての定住許可」をするしか方法がありません。

日本は国際協調と平和主義を国是とする国です。日本の権原放棄を基本原理として、当事者の大韓民国や他の国々も納得する形で平和的に解決されている在日の国籍問題について、新たな制度を一方的に設けてその解決を反古にするほうが無理があります。在日の皆さんが不満に思うなら、朝鮮民族の代表としてその解決にあたった大韓民国に対して抗議するべきなんです。

私個人としては、在日朝鮮人の皆さんが国籍選択制度を望まれるなら、韓国政府に対して日本との間で在日に関する国籍選択制度の制定を協議するよう要求するべきだと思います。そういう条約や申し合わせが出来れば、平和条約や基本条約の規定に触れない形で日本が国籍選択制度を導入することができます。条約や申し合わせがなければ、在日に対する大韓民国の対人主権が引き続き有効なので、日本が在日の身分関係を規定できるのは本人の申請というきっかけ以外にないのです。



【Q13】
>在日の対人主権を主張した韓国政府は、戦後、在日のために一体、何をしてきたのだと、本当に庇護する気があったのか、それとも在日を外交交渉に利用するだけ利用しておいて、あとは彼らを棄民のような扱いをしてきたんじゃないか、という疑いが浮かんでくるわけです。私は、在日の方々が、半島政府の責任について問うてはいけないもののように一切触れようとしないのが不思議でならないのです。棄民のような扱いを受けていれば、「なぜ捨てた」と問い詰めなければならないのに、なぜか一切、視野の外に置こうとする態度は、私にとってどうにも不可思議です。(by furukotobumi)
そういう訴えが在日コリアンの間から出てくるのであればいいですが、もしあなたが日系日本人であるなら「大きなお世話」でしょう。韓国政府が仮に自国民に対する責任を果たしていなかったとしても、だからといって日本政府の責任が軽減されるわけではないのでは?

●A13.
良く判らないのですが、日本政府の責任とは何なのでしょうか?

在日の国籍喪失朝鮮半島の独立に不可欠な手続きです。一律に日本国籍を喪失することにしないと、朝鮮人の個々の意思が確認出来ないかぎり、日本が朝鮮統治行為を継続することになりますよ?

内地に住んでいる人たちは、自らの意思によって国籍を取得出来ます。
届出や選択制が取れないのは、そもそも平和条約発効後には日本国籍を認める根拠がなくなってしまうからです。およそ朝鮮人日本国籍の根拠に、平和条約の権原放棄規定に抵触しないものはありません。

条約発効までの間国内に定住してきたということですら、日本が統治している朝鮮に住む者を日本人とした、という朝鮮統治に基づく国籍認定が根拠になっているからです。その朝鮮統治を根拠とする事は否定される、というのが平和条約なので。



【Q14】
法的ではなく、倫理的・政治的な責任は日本政府にありませんか?

●A14.
そうおっしゃるなら何をもって法的、倫理的、政治的とおっしゃっているのか、その違いを説明してください。そもそも倫理的、政治的に問題があると判断した連合国がカイロ宣言ポツダム宣言、平和条約で、その責任や日本の負うべき責め、その賠償のために日本のなすべき事を決めたのでは?

> それ以前の植民地支配や併合から責任があるわけですが。

その責任ってのが何なのかを事実関係をもとにハッキリさせないでいるから、感情論では?といわれるんだと思いますね。
基本的な事実関係を把握しないまま、安易な感情論に走ってはいけません。
国際紛争の解決の手段としての国権の発動たる戦争を否定している日本にとって、独立と自国の平和を守るためには国際法のバカと思える位糞真面目な解釈と遵守こそが国防だと思うんですけどね。諸外国との約束を誠実に守る国だからこそ諸国の信頼を勝ち得て自国の安全を守れると。

そもそも今回の平和条約の目的自体、カイロ宣言に始まり大韓民国臨時政府の働きかけを受けた連合国に指摘された、朝鮮民族の民族自治や独立を日本が妨げている事の倫理的政治的責任の最終的な決着を図るべくなされた法的な決定ではないですか?
ですので、平和条約の忠実な履行や、諸々の問題を平和条約に基づいて解決して行く事が、倫理的・政治的な責任を取ることになるのではないですか?

政治的・倫理的な責任を口実に、政治的・倫理的な責任を解決するために定められた法的な決定を否定しろとおっしゃってるのです。だからこそ、それを正当化出来る法的根拠を出せと言っているのですけどね。

> 法的な責任の問題は一切していない、と何度言えば分かるのですか?

あなたの言う所の倫理的・政治的責任の解決のための法的な手続きが平和条約等なんですけど?

> でもその代わり日本政府がやったことが間違いでした。

間違っていない、というか、問題解決の方法として諸外国との間で約束した事が平和条約の規定で、それに反する選択肢を日本が取ることができないって事を説明し続けているのですけどね。
あなたの主張する解決方法を取る事が出来るという法的根拠を示してください。国際法ってのは相互承認が基本なんですよ。お互いが約束をして、それを守るから効力が生まれるんです。あなたの主張にはその観点がすっぽり抜け落ちているんです。



【Q15】
だから、法の話はしてないって。

●A15.
国籍ってのは思いっきり法の問題なんですけど。
その認識はあるから「政治的」という言葉を入れていらっしゃるのでしょ?



【Q16】
国際的な条約というのは、全て正しく非の打ちどころがないようなものであり、それに対する一切の批判をしてはいけないのですか?

●A16.
いいえ、そんな事一言も言ってませんけど。

ただ、条約は関係する諸国が問題解決のために交わした約束で、その解釈については諸事情を踏まえた関係諸国の明示・黙示の同意が示されて長期間経過しています。ですから今の解釈は、長年にわたって関係諸国によってその正当性・妥当性が確認・支持されて来たものなんです。それを変更しろというのですから、当然それなりの根拠が必要だと言ってるだけですよ。
ましてや、あなたの主張する別の施策というのが、その従来の解釈と真っ向から対立するのですからね。従来解釈を変更する側にこそ自説の妥当性の立証責任があるのですよ。

当時の経緯から言っても、在日朝鮮人は戦後すぐのGHQ総司令官着任の時点で「解放国民」として扱う事、そのために必要な措置をすることが規定されていた(1945年11月の連合国最高司令官への降伏後の初期基本指令より)ように、日本の支配から離脱するべしというのが日本以外の国の考えだったんですよ。韓国もGHQに対して在日の一律韓国籍確認をするように求めていましたし。

日本の側も、日本が韓国併合の際にやった国籍認定ってのは朝鮮統治を口実にしていて、朝鮮半島に居住しているかどうかに関わらず当時の大韓帝国臣民すべてを日本国籍としちゃったんですよ(在日の日本国籍確認の裁判でもたびたび指摘されている事です)。だから、朝鮮統治を放棄すると宣言しちゃうと、それこそ朝鮮人を日本人と主張する口実を失います。また、内地に住むからという理由だけで日本国籍のままというのは、国籍を取得した経緯から考えても整合性を欠きますね?当時の朝鮮にいなかったのに日本人扱いされたのに、朝鮮半島にいないと国籍離脱出来ないわけですから。

あなたには、そういう当時の諸々の事情やそれらとの整合性の検証から始めてもらいたいですね。そして、それらを踏まえて権原放棄規定やそれに基づく国籍離脱の妥当性を議論してください。条約やその解釈はそれらを踏まえた上で妥当とされているものですから。そういう検証の不足が、たとえばYさんの

> いずれにしてもあなたの主張は
> 「ああ、何て可哀相な人達。そして彼らに友愛を示す自分はなんて素晴らしいんだろう。」
> 以上の物にはなりえません。

という指摘になるのではないかと思いますね。

で、私は国際条約によって決定されているから正しいなんて言ってませんよ?国際条約で規定されている事は、当事者である主権国家同士の実力を背景にした合意であり、それを当事者が守る事で有効になるとは言ってますけど。で、それをひっくり返せるだけの正当性を示す必要がある、と言っているんです。

なにせ国際法ですから、国内法の憲法に相当するような「これに違反する規定は無効ね」なんて言える最高法規なんてものが存在しないんですよ。その効力の起源は、合意した主権国家の実力を含む主権に依存しています。だから、ひっくり返せる正当性をどこに求めるか、その正当性となるものが当時の情勢や当事者の認識、問題点とされた事をきちんと踏まえたものであるかなどが重要なんですよね。それを満たしたものが国際法における法的根拠です。

そもそも、朝鮮人大韓帝国臣民だったから日本国籍となったのです。実際朝鮮半島に住んでいなかった大韓帝国臣民も一律に日本人とされましたからね。なので、住んでいる場所によって日本国籍離脱に差が発生する事自体、国籍取得経緯をふまえない乱暴な議論だと思います。



【Q17】
住んでいる場所によって国籍の持つ意味合いが違うので、人権保障の見地から、日本在住の朝鮮人について日本国籍を選択する権利を認めることは、決して乱暴な議論とは言えないでしょう。むしろ日本政府は、歴史的事実から言えば、終戦後数年間は在日朝鮮人日本国籍選択権を付与することを考えていたようです。

サンフランシスコ平和条約には国籍条項がありませんので、一律日本国籍離脱とは異なった解釈・取り決めは可能だと私は思っています。また、サ条約が、もし仮に、国籍一律離脱が妥当と解釈されても、その場合は日本の国籍法の中に国籍選択制度を設けて、一旦朝鮮人日本国籍を離脱させた後、在日朝鮮人希望者に届出で日本国籍を認めることにすれば、条約に抵触しませんし、朝鮮人が住んでいる場所によって異なった選択が出来ることに何らの矛盾も生じないのでは?

何世代にも渡って日本に住んでいて、その多数は日本生まれ日本育ちであり普通に日本社会で生活してきていることが、国籍取得条件に何ら関係するべきではない、というほうが暴論でしょう。

●A17.
> 世代があらかた入れ替わるほどの時間経過と「特別在住」という特殊なあり方が相当期間続いているという事実性の蓄積から「国籍選択」という次の段階に進むべしという意見にはそれなりの正当性があると思います。

原理的にはあり得なくはないと思いますよ。ただし、それを日本から言い出す意味を考えていただければよろしいかと。大韓民国の国民庇護に問題がある、と日本が主張する事になるわけで、内政干渉の恐れがあります。現状では大韓民国の主権が及ぶとされ、その韓国の要請に基づく形で韓国の対人主権を維持したままの定住の便宜を図ってきたわけです。韓国はそうやって自国民の庇護を行って来ている。
こういう状況を考えれば、やはり在日から自国政府への要請に基づき韓国側から問題提起されるべきだと思いますね。ということで、

> 何世代にも渡って日本に住んでいて、その多数は日本生まれ日本育ちであり普通に日本社会で生活してきていることが、国籍取得条件に何ら関係するべきではない、というほうが暴論でしょう。

というのは、国籍喪失や韓国政府の主張の経緯を考えると、むしろ在日朝鮮人だからこそ国籍取得条件にならないとする方が妥当といえるでしょうね。で、日本人収容所の問題への例えで言えば、

「在日が日本で暮らしている事=日本人が収容所に入れられている事」であり、「国籍離脱=収容所閉鎖の決定」「国籍離脱後の永住許可=収容所閉鎖後も当面収容所の建物利用を認める激変緩和措置」といえるでしょうね。しかし、韓国政府は「在日同胞が韓国の対人主権下のままの永住=収容所閉鎖永続的な建物利用の許可」を最終的な決着として設定しているわけですから、「協定永住者から特別永住者という地位の設定=閉鎖収容所の整備や利用許可に関する根拠法・契約の明示」で、「在日の地位に関する最終的な決着=収容所からの解放」が終わったといえるでしょうね。

その状態で国籍選択権を主張する事は「閉鎖収容所の永続的な利用許可があるのだから、単なる利用者か建物やその土地の共同所有者になるかのいずれかを選べなくてはおかしいのだ」と言っているのに等しいわけです。



【Q18】
韓国人に対する対人主権が韓国にあると主張する向きがありますが、韓国領域外の韓国人に対してはそれも制限されるそうです。在日は言葉どおり日本の住民なので日本の政治の支配を受けるわけで、従って、在外韓国人の義務や権利は、大抵が滞在国において生じるのでは? 

●A18.
自ら領土主権の話を持ち出されているので言うまでもないと思いますが、領土主権に基づく限り日本の支配領域を離れれば日本での義務も権利も喪失します。それでは自国民の扱いが相手国の完全な裁量に任されてしまい、自国民に必要な庇護が全くできなくなって困るわけです。それじゃ困るから対人主権や国籍という概念が存在するんですよ。世界中どこにいても自国に帰属する人間に対する最終的な責任とその者の保護の権利である「外交的保護権」の根拠が対人主権であり、どこの国が対人主権を行使出来るかの識別が国籍なんです。

なので、住んでいる場所でコロコロ国籍が変わってしまう事は「外交的保護権」をどこが持っているかを不明にしてしまうため不都合が大きいのです。むしろ、国同士の条約による決定に依存せず自らある国の国民として生きて行く事を選ぶのであれば、自らの意思でその国の国民としての義務と責任を負う覚悟をした上で帰化をすべきです。外交的保護権という国外での最終的な庇護の仕組みを有効に活用するためにも必要です。

国籍選択権を与えろ、という議論については、別の方もオーストリアとドイツの間の合意に触れられていたように、やはり日本と韓国の間でそういう取り極めがなされるべきですね。でないと、在日の外交的保護権の一方的剥奪と言う明確な国際法違反が起きてしまいますから。1950年代の西ドイツの在独オーストリア人にドイツ国籍を認めた裁判があり、その判決への在独オーストリア人の反発がこの国籍選択権を認める立法の原因になっているようですね。反発の理由は「ドイツによるオーストリアの外交的保護権の侵害」です。だから一方的な国籍選択権は危険なんですよ。

植民地独立の際の国籍については、必ずしも日本のような甘い措置がとられてたわけじゃないですよ。外地人が一律に国籍喪失し、その上で簡易帰化の手続きをみとめたというのはむしろ公平な扱いと言えると思います。というのが、他国の植民地の場合、植民地の歴史的経緯などを根拠に、国籍と市民権、居住権や参政権などの諸々の権利について本国人との扱いを区別しているからです。

植民地といえば、世界最大の植民地を持つイギリスの国籍の話が象徴的ですが、彼等は戦後の植民地独立に際し、独立した地域で市民権に関する法律を定めるまでの条件付きで英国の市民権を認めました。これを朝鮮に当てはめると、南北での建国後の関連法令の制定時までは日本国籍を認める、という主張ですね。さらに1970年代に「一般に国籍に付随するとされる自国へ入国する権利などを一方的に剥奪するのは、なんら差しつかえのない『国際的な慣習』」として居住権法を制定し、英国市民権を持つ者の一部以外から英国人としての英国入国の権利を剥奪します。英国国籍だからといって英国本国の国民と同じ権利を認める必要はない、と言ってるわけです。さらに1980年代に、そのような権利を制限された英国国籍保持者には本国居住の条件に本国への帰化を求めています。

日本では国籍=市民権ですが、イギリスの例などを見れば判る通り、国籍≠市民権です。国籍を認めたからといって様々な権利義務が自動的に付随するわけではない、国籍を持っている者の間でも権利の制限の有無の差異はあってもよい、というのが世界的な常識のようです。そこらへんを踏まえながら他国の分割併合や植民地関連の国籍の扱いを見て行かないと大きな間違いを犯すと思います。




【Q19】
その国籍に由来する韓国の在日韓国人に対する対人主権より日本の領土主権が優越するわけです。在日外国人は日本の政治の支配を受けるので、在日外国人の義務と権利は滞在国にこそ生じる、ということです。 堂々巡りして元の私のコメントに戻りましたね。ご苦労さん。

で、以前あなたは、「外交的保護権」という概念があるのは、まさに日本政府には最終的な外国人人権の庇護の責任も権利もないことの現れ」と書かれましたが、嘘八百のでたらめです。実際は、私がその前のコメントで「日本政府が外国人の人権を保護しないというようなことは、国際法上も日本国憲法上も許されない」と書いたように、日本政府は在日外国人を国際法に基づいて保護する責任があるのです。 もし、日本が外国人の人権を侵害して損害を与えた場合、外国人の国籍国は外交保護権を行使して日本に対し損害賠償を要求することができます。 日本は、国籍国による外交保護権の行使という形で、“外国人に対する日本の国家責任”を追求されることになるわけです。 従って、「外交保護権があるのは在日外国人の人権に対する責任が日本政府にないことの現われ」とのコメントは、事実とは全く逆のあなたの捏造、在日朝鮮人に対する日本の責任を回避したいが為にあなたが作り話をされたということです。

>なので、住んでいる場所でコロコロ国籍が変わってしまう事は「外交的保護権」をどこが持っているかを不明にしてしまうため不都合が大きいのです。

帰化制度も国籍選択制度も、どちらも住んでいる場所での国籍変更ですから、あなたの主張に何ら正当な理由がありません。

>自らの意思でその国の国民としての義務と責任を負う覚悟をした上で帰化をすべきです。

帰化」とは「他国の国籍を得てその国民となること」です。 国籍選択権も「自らの意思」で外国人が日本国籍を取得することですから、同じことです。 以前にも国籍選択権は「本人の意志」に基づくと書いたのですが、本当にあなたは理解しようとしませんね。 わざとですか?

>だから一方的な国籍選択権は危険なんですよ。

だから、国籍選択権は在日の「個人の自由意思」に基づいた日本国籍取得であって、日本国による一方的な国籍付与ではない、と何度も言ってるんですが。 なぜわざと誤解したようなことを繰り返すのですか?

>植民地独立の際の国籍については、・・・(以下省略)

あなたの誤りに基づいた自論の援用にも、私の主張に対する何らの有効な反論にもなっていない、無意味なコメントだと指摘しておきます。

●A19.
> その国籍に由来する韓国の在日韓国人に対する対人主権より日本の領土主権が優越するわけです。 

その領土主権で保護されない場合がありえること、その場合の帰属国の庇護の権利として「外交的保護権」があるわけですが。

思うのですが、外交的保護権について少し勉強されてはいかがですか?これは領土主権を行使する国の法的手続きにおいても自国民の権利が侵害されている、というのが行使の前提になっていますから。その上で主張するわけですから、領土主権が人権保護の最終的な責任を負うのではなく、帰属国が最終的に人権の庇護の責任を負うからに他ならないのではないですか。外国人の地位は、帰属国が自国民の庇護のために要請をし、それを了解した当該国が保障する形です。それでは当該国が了解することをやめたといって内国法で制定してしまえばそれまで。だから「外交的保護権」を設定して、最終的に帰属国が権利を守る事にしてあるのですよ。

それから、国籍選択権では日本が潜在的日本国籍を主張する正当性を認めてしまうからだめ、って言ってるんですけど、理解していますか?条約が在日に日本国籍を認める正当性をすべて無効にしている以上、日本国籍であってよい、という理由がないんです。選択肢には正当な根拠のあるものが挙げられるべきで、そうあってはならないものを選択肢に入れるわけに行かないでしょ。日本が日本国籍を選んで当然、といえる理屈がすべて条約で否定された以上、日本国籍が選択肢に入るわけにはいかないんです。

結局、日本国籍を選択肢とする根拠は、今外国人として日本に暮らしている事を根拠にするしかないはずです。それであれば、他の定住外国人にも同様に国籍選択権を認めなくてはなりませんね。だから、対人主権をもつ韓国から国籍選択に関する提案をしてもらい、それを根拠にするのが一番ではないかと言っているのですが。

その点、帰化制度は選択制度のように帰化する先の国籍に正当性を求める必要がありません。帰化は任意の国に対して行える(在日の場合、韓国政府がそう定めているのならば、ですが)のですから。

植民地独立の際の事実関係は、私が間違っていようがいまいが関係ない話ですよ。イギリスは実際にそういう主張をして英国国籍を持つ者の間の地位を区分していますから。あなたの主張ではそういう国籍や市民権の現実は都合が悪いでしょうね。だから無意味だと切って捨てるしかないのはわかりますけど。

あ、そうそう、外交保護権でなぜ国家が損害賠償(実力行使を含む)という形になっているかという理由ですが、国際法の主体は主権国家だからです。

国際法というのは主権国家同士が交わす取り極めや慣習などの総称で、個人はそれらの主権国家が認証することで初めて国際法で対象とされるようになるんですよ。うちの国民である、と、どこかの国の政府が保証する事が国際法上の個人という地位の根拠になります。だから保証する国がその人の権利義務に関する最終的な責任を負う事になるのは当然のこととなります(その国の責任で「人」と認めたのだから)。

無国籍者の扱いが国際法上の問題になる理由は、そういう責任を取る主権国家がどこにもいない事です。ある国に責任がある、とすることは、その国の国籍を持つという事と同じ事なんですが、どこの国の国籍も持たないから無国籍者な訳で。




【Q20】
帰属国に外交保護権があっても、外国人の人権が滞在国で平等に保障されるわけではありません。あなたは私の論点を履き違えて論じられていますね。
そもそも私は、「外国人は居住国の政治的支配を受けるので、在日外国人の居住地における人権尊重がどのように達成されるかは日本の外国人政策に委ねられる」、という意味のことを述べたのです。それをあなたがご自身の思考の尺度でもって帰属国の法的責任論に転化されたわけです。
しかし、いくら帰属国の庇護の責任を力説されても、滞在国に対する内政干渉が許されるはずもありませんから、対人主権があったところで、在外国民に対する人権保障には自ずと限界があるのです。

>結局、日本国籍を選択肢とする根拠は、今外国人として日本に暮らしている事を根拠にするしかないはずです。それであれば、他の定住外国人にも同様に国籍選択権を認めなくてはなりませんね。

そもそもの私の主張が、「日本生まれの永住者の子どもに対しては、特別永住/一般永住を問わず、届出による日本国籍取得制度を設置すべき」というものだったのですが。

●A20.
まだまだ誤解をされているようですが、

> そもそも私は、「外国人は居住国の政治的支配を受けるので、在日外国人の居住地における人権尊重がどのように達成されるかは日本の外国人政策に委ねられる」、という意味のことを述べたのです。

全くもってその通り。帰属国が自国民の権利と安全を保障すべく、居住国に対して居住国の主権に基づく庇護を要請していることを根拠にしてるのです。ですので、帰属国の要請を受けた範囲において居住国に裁量があるのは当然の事です。要請を受けて庇護をしているだけですから、苦情はそのような要請をしている帰属国経由でどうぞ、という話なんですけど?外国人を受け入れている居住国側にしてみれば、帰属国の要請があるから自国に受け入れしているだけなので、何もその外国人の権利関係について責任を負ってるわけではありません。

こう考えてみると判りやすいですね。Aという会社とあるサービスの契約を結んだとき、そのAという会社が委託した先のBという会社によってサービスの一部が提供される事は良くあります。そのBという会社が担当した部分のサービスに不具合があり、Aという会社と契約した内容全体がパァになったとしましょう。この場合、Bという会社に直接文句を言っても補償や責任問題は解決しないでしょ?結局最終的な責任は契約を結んだAという会社にあり、Bという会社はあくまでAに対して責任を負うことになるはずです。

このたとえのAという会社が帰属国、Bという会社が居住国であると考えてもらえば、私の言っている事は判るかと思います。居住国はあくまで帰属国から要請を受けているだけの事です。だから居住国は帰属国に対して責任を負うわけで、文句は権利保障を居住国に託した帰属国にどうぞ、って事になるわけです(日本は外国人にも請願権を認めてますから、日本国政府が善意で直接声を聞いてくれることもあるでしょうが)。

> 在外国民に対する人権保障には自ずと限界があるのです。

全くもってその通りです。そして居住国が負う責任にも同様に限界があり、権利の保障は帰属国が最終的な責任を負うわけです。

> そもそもの私の主張が、「日本生まれの永住者の子どもに対しては、特別永住/一般永住を問わず、届出による日本国籍取得制度を設置すべき」というものだったのですが。

はい、それは理解していますよ。

ただ、現代の問題として出生地主義であるべしという理屈が説明されていないので、なぜそういう制度を作るべきなのかも理解出来ません。日本には国際協調主義という国是がある以上、諸外国の主権を最大限に尊重するべきですね。届出による国籍取得制度をつくることは日本在住の外国人に対する帰属国の対人主権を骨抜きにしかねませんから、帰属を安易に変えられるような制度を相手国の了承なしに作る方が良いという理屈は成り立ち難いでしょうね。

ということで、おっしゃる制度を作るにしても、過去にさかのぼっての適用ではなく、日本が出生地主義を認めた時点以降に生まれた子供についてのみ適用される形とするくらいしか方法がないでしょうね。




【Q21】
>文句は権利保障を居住国に託した帰属国にどうぞ、って事になるわけです

そもそも私は日本の外国人政策に対する一つの提言として主張したのであって、特定の外国籍者のために「文句」を言ったのではありません。つまり、あなたの主張は私の論点から外れているので意味がないのです。ただ、あなたの仰りたいことは理解しました。

●A21.
私には「現代の問題として」という位置づけが理解できないので、ぜひ説明してもらいたいですね。

むしろ、現代は過去の歴史に類を見ない程の国家間の人の行き来が行われる時代です。居住しているかどうかがその地域を管轄する国との関係の軽重の判断基準にはならないでしょう。帰属する意思がなくても仕事の都合などといった自己都合を理由に永住権を取ったりする人も珍しくないのが現代の世界ですから。

ですので、出生によって親の国の国籍を取得するのは、自力で判断出来ない子供に対する基本的権利の保護の観点で当然でしょう。しかし上記の現代の現状(居住地が帰属を意味しなくなって来ている)を踏まえれば、帰属を申し出る本人の意思とその国家側の受け入れの意思の合意に基づくほうが自然じゃないのか、と思うわけです。




【Q22】
日本政府も、当初は在日朝鮮人日本国籍選択権を付与することも考えていたようですが、途中、時の政治家の意向の影響を受けながら、国籍一斉剥奪に方向転換していったようですから。

(以下、半月城通信 No.25より抜粋)
  さて、日本では「国籍選択」はどのように扱われたのでしょうか。関係者の発言は次の通りです。

<堀内内相>45年12月5日、衆議院選挙法改正委員会
  「内地に在留する朝鮮人に対しては、日本の国籍を選択しうることになるのが、これまでの例であり、今度もおそらくそうなると考えています」

<川村外務政務次官>49年12月21日、衆議院外務委員会
  「(国籍選択については)だいたい本人の希望次第決定される、ことになるという見通しをもっている」

吉田茂首相>51年10月29日、衆議院平和条約特別委員会
  「(朝鮮人の)名前まで改めさせるなど、日本化に力を入れた結果、朝鮮人として日本に長く『土着』した人もいれば、また、日本人になりきった人もいる。
  同時にまた何か騒動が起きると必ずその手先になって、地方の騒擾その他に参加する者も少なくない。いいのと悪いのと両方あるので、その選択は非常に・・・、選択して国籍を与えるわけではありませんけれども、朝鮮人に禍を受ける半面もあり、またいい面もある。・・・
  特に、朝鮮人日本国籍を与えるについても、よほど考えねばならないことは、あなた(曾根議員)の言われるような少数民族問題が起こって、随分他国では困難をきたしている例も少なくないので、この問題については慎重に考えたいと思います」

<西村条約局長>51年11月5日、同上
  「かって独立国であったものが、合併によって日本の領土の一部になった。
その朝鮮が独立を回復する場合には、朝鮮人であったものは当然従前持っていた朝鮮の国籍を回復すると考えるのが通念でございます。
  ですから、この(平和条約)第2条(A)には国籍関係は全然入っていないわけであります。日本に相当数の朝鮮人諸君が住んでおられます。これらの諸君のために、特に日本人としていたいとの希望を持っておられる諸君のために、特別の条件を平和条約に設けることの可否という問題になるわけです。
  その点を研究しました結果、今日の国籍法による帰化の方式によって、在留朝鮮人諸君の希望を満足できるとの結論に達しましたので、特に国籍選択というような条項を設けることを(連合国側に)要請しないことにしたわけです」
http://www.han.org/a/half-moon/hm025.html#No.199

●A22.
注意深く読んでもらえば判るかと思いますが、国籍選択があった際の選択肢としての日本国籍の可能性が検討され続けているだけですよ。
ですので、GHQの方針に従って在日朝鮮人が「解放国民」として日本の統治を離脱する措置がとられ続けていることと何ら矛盾がありません。

最後の西村局長の発言の

「日本に相当数の朝鮮人諸君が住んでおられます。これらの諸君のために、特に日本人としていたいとの希望を持っておられる諸君のために、特別の条件を平和条約に設けることの可否という問題になるわけです。」

という発言も重要です。

国際法上、特別の条件を設定しなければ日本が国籍選択を実施できない、という事を確認しています。その上で、日本がそのような条項を盛ることを要請するかどうか検討したというわけですから。
結局、国籍選択制度を採用するにあたっては、在日朝鮮人の帰属する朝鮮半島の合法政府である韓国との間に別途国際法上の規定をする必要がある、ということですね。

ちなみに北朝鮮は、近年の恒例行事とはいえ「日本は840万同胞を拉致している」との立場を表明しました。北朝鮮側からすれば、在日に国籍選択権を認めるのは拉致の既成事実化・固定化をしていると非難されるでしょうね。まあ、日本からすれば、北朝鮮朝鮮半島を代表する合法政府ではないので、彼等の在日への主権やそれに基づく主張を認める理由もないわけですが。

で、現実に日本に滞在する在日朝鮮人と言われる人たちが、そのような国籍喪失の経緯と何ら関係ない場合が非常に多いと言われているのが問題だと思います。密入国の後滞在資格を得たような人たちが国籍選択を認められるのなら、それは日本の対人主権の重大な危機と言わざるを得ないでしょう。

実際昭和30年には大量の密入国と韓国の引き取り拒否で強制送還すらできず、仮放免する手前在留許可を出さざるを得なかったような例が多発して国会で問題になっていたという事実が有ります。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/022/0488/02206180488023a.html

そのような自らの出自を公然と新聞紙上で公開していた在日もいましたね。



【Q23】
国籍選択権に関する条項をサンフランシスコ条約に設けることを要請しないとの判断を日本政府が下した、というのが歴史的経緯ですよ。当初考えていた国籍選択権の付与を、条約直前に自らの政治的判断で却下した、その責任は日本政府にありますよね。

>こと国籍一律喪失に関しては日本に咎はないことがはっきりしてきたように思います

日本の咎が「国籍一律喪失」そのものにあるではなく、在日朝鮮人に日本人と同等の権利を保障しなかったことにあるのです。「国籍選択権」は保障すべき権利の中に含まれる、と私は思っています。


●A23.
日本は国籍選択に相当する条項がなくても、希望者には帰化で対応出来ると判断しただけです。また、他国も在日朝鮮人を「解放国民」と規定して来た(GHQは連合国の占領軍ですから)以上、あらためて選択権を盛り込む理由もないですね。だから条約に盛り込まれなかったんです。

> 在日朝鮮人に日本人と同等の権利を保障しなかったこと

そりゃ当然ですよ。
朝鮮が独立し新たな国を作るのですから、新たな国が自国民の権利を保障するのが筋です。在日を含む在外朝鮮人のための必要な協定(国籍選択でも良いですよ)を提唱し結ぶのは、他でもない朝鮮の合法的な政府の負う責務です。



【Q24】
(1)在日韓国人が中東某国旅行中に拉致されました。犯人は彼らのパスポートを見て韓国に身代金を要求しました。この場合、救出活動を行い身代金を支払うのは、韓国でしょうか、日本でしょうか?
(2)中東某国が国際紛争に巻きこまれその首都の1時間後の爆撃が宣言されました。首都に集まった邦人を救出するため日本政府はチャーター機を飛ばしました。ここからは極端な例ですが、飛行機は300人の定員なため、1家族4人がどうしても乗り込めません。パスポートを確認したところ、在日韓国人一家4人が既に機内に乗り込んでいることが判明しました。日本政府担当者としては、在日韓国人一家に韓国の航空機に移るよう要請しました。
さて、韓国の航空機が到着していれば問題はないでしょうが、もし、到着しておらず、300人定員は絶対と考えた場合(貨物庫や空きスペースがなかったとお考えください)、どのように対応するのが日本政府としてベストなものでしょう。

つまり、対人主権というのはこういうことでしょう?

●A24.
(1) 当然在日韓国人の帰属国である韓国です。
(2) 当然日本人を優先ですよ。もちろん、その中東某国を爆撃する側が在日を乗せないとその飛行機自体が爆破する、とか言ってるのでなければの話ですが。

ある人の権利義務に関する最終的な責任を負うのは、その人に対して対人主権を主張する主権国家ですから。



【Q25】
中東某国後日譚

(1)中東某国の誘拐犯は実は最初在日韓国人旅行者を日本人と間違え拉致しました。アジトでパスポート確認をして初めて韓国人とわかったのですね。即座に殺害するか身代金を取るか迷いましたが、一応韓国大使館・政府に拉致の事実と身代金を要求しました。ところが、韓国政府も大使館も身代金額を渋ったのか(官房機密費というものが枯渇していたのか)、交渉が難航しているうちに、旅行者たちは殺害され、その映像が全世界に配信されました。
日本在住の遺族は、日本国の住民に対して日本政府がこれといって何もアクションを起こさなかったこと(遺憾の意を表明しただけ)に、「人権」の観点から抗議の声をあげるのは妥当だとお思いですか?

(2)日本政府のチャーター便に既に搭乗していた在日家族4人の父親は、その中東某国に赴任していた企業の社員の一人で、その仲間の社員たち家族と一緒にどやどやと飛行機に乗り込んだと想定してみてください。本人たちも周囲の社員もそうするのが当然と思ってのことです。一方、積み残された日本人一家4人の父親は、家族でそこに偶然滞在していたフリーランスのライターかなんかだとしましょう。もちろんコネもありません。
その企業の他の日本人社員家族は、社員としての一体感で、その在日社員家族が降ろされるのを阻止しようとしますが、日本政府担当者は、申し訳ないが日本国籍者よりも優先するわけにはいかないと正論を言って降りてもらい日本人一家を搭乗させました。
その後結局韓国の航空機は到着せず首都が爆撃を受け在日一家4人が亡くなったとしましょう。そのとき遺族は「人権」「差別」の観点から損害賠償を日本国政府に求めるのは妥当だとお思いですか?

もちろん、むちゃくちゃな設定ですが、rubio1919さんの主張はこういうことを妥当だとお考えの方のものだと思うのですね。
実際は、外国でトラブルに遭遇した在日の方々でも韓国大使館じゃなく(朝鮮語を話せないから)日本大使館に保護を求められてるそうですが、それは何か韓国との「協定」でもあるのでしょうか。

●A25.
1) 誘拐犯から接触もなかった日本国政府に何の責任もありませんね。
2) 中東某国で現実にあった話として、イラン・イラク戦争の実例がありますね。その時、日本人は他国籍であるという理由で、他国の救援機に空きがあったときしか乗せてもらえませんでした。ですので、世界の一般常識としても遺族の賠償請求は認められないでしょうね。

在日の方々が日本の大使館に押し掛けるという話ですが、何の協定も有りません。実際、大使館の皆さんは大変困っているそうです。日本の大使館がなんらかの対応をしても、あくまで善意の第三者としての対応です。



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引き続き興味をお持ちの方は
「③朝鮮に「帰属」する者の「国籍選択権」は可能であったかについての議論」にお進みください。
http://d.hatena.ne.jp/furukotobumi/20100129/p1